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クバナの歩き方(36)

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 漸く、連れがOKを出す部屋も決まり、夜中にゴソゴソと上階の部屋へと移った。シーンと静まり返った廊下、誰も乗っていないエレベーター……、ひょっとすると、このホテルは今日、ガラガラなのかも知れない。一応、騒音のないツインルームの部屋ではあったが、すご〜く耳を澄ませると微かに工事の音はしていた。「ちっ、さっきの部屋と、かかってる絵すら変わりねえ〜よ。これ、カラーコピーした絵かあ?」と、こまめに連れのチェックが入る。どの部屋も部屋の向きこそ違えど、何も変わりないことが分かって少々落胆気味だ。「え〜え〜、さっきの部屋のバスローブの方がよかった〜。なんだよーコレ、えっ半袖かあ〜? ちっ、さっき取っておきゃよかった」と、平然とバスローブを持って帰るつもりにしていることを告げている。「このホテルの管理、ズサンだから、1枚くらい分かりっこねえーよ。いいじゃん1枚くらい……」とバスローブの手触りを確かめている。なぜか連れは異常にバスローブにご執心で、普段バスローブなんか着もしないクセに、とにかく欲しがる「バスローブ癖(へき)」がある。そういや約7年前、私が一時帰国で泊まっていた東京のホテル「ニュー・オオタニ」でも、連れの「バスローブ持ち帰り企て事件」はあった。わざわざ私の宿泊先に泊まりに来てバスローブを持ち出そうと試みたのである。もちろん未遂に終わらせたが……。兎に角、どこの国のどこのホテルであれ、私が予約して私のカード番号を渡しているのだから、私が「万引きした」と思われるのは絶対に心外である。どうしても欲しいと言うなら、ホテルにその旨を告げて、私が、購入して、あ・げ・れ・ば・イイ話である。「欲しいの?」と訊くと「ねえコレ、すごく珍しいと思わない?半袖だよ半袖。ありえね〜よなっ」と笑いながらベッドに寝転ぶ。どうやらバスローブの件は諦めた様子だ。やれやれ。
 多分、深夜1時ごろ。いきなり連れが「あれっ、○○リン、みて、みて!大変だー、火事だっ、ほら火事」。窓からみえる西の方角(旧市街)に火事らしき炎を見つけたようだ。言われるまま、私も窓の向こうを見やると、結構燃え盛っているビル群が見えた。炎は次第に勢いを増し、右左と炎がユラユラゆれて、火柱が次々と近隣に燃え移っているようにもみえる。しかし……、その炎は、単に工業地帯の高い煙突から吹き出ているようにも思える。私たちが泊まっているホテルは超高層で、180度、どれだけ周りを見渡しても高いビル群などはなく、平坦な平屋建ての家屋か、果てしなく広がる真っ暗な海しかない。よって旧市街のまだ先まで、何の隔たりもなく見渡せてしまうのだ。暫くしても一向に炎が沈静化する風でもなく、消防車のサイレンの音すら聴こえない。街は何事もなかったように静まり返ったままだ。「どうやら工業地帯の煙突の炎だな」と結論づけるまで、2人して、暗い街頭すらポツリポツリとしかない「真っ暗で素朴なクバナの街」を黙って見続けた。マンハッタンの超高層コンドミニアムで暮らす日々。毎夜24時間、煌々ときらめくネオンに慣らされている普段の生活からかけ離れた、何だか懐かしい夜空だった。そんなクバナの街ともいよいよ今夜でお別れである。(次号に続く

(写真説明)旧市街のクバナの基点(ゼロ地点)にそびえるホワイトハウスとそっくりな「旧国会議事堂」。高さ98mと本家のホワイトハウスよりもやや大きめに作られているという。大理石がふんだんに使われ床には24カラットのダイヤモンドが埋め込まれているらしい

*「クバナの歩き方(1)」はこちらからどうぞ!
*料金表示はすべて1人あたりの金額です。
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メモ:今回までの合計金額=$1673.89
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CUBA AIR =$322.00/カンクン〜ハバナ(往復)
US AIRWAYS =$354.89/ラガーディア〜カンクン(往復)
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Telegrafo =$172.00(1人分/3泊/旧ハバナ宿泊)
Melia Varadero=$230.00(1人分/2泊/バラデロビーチ宿泊)
Melia Cohiba =$95.00 (1人分/1泊/新ハバナ宿泊)
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キューバでの遊興資金=$500.00(445ペソ)
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2008年4月25日号(vol.165)掲載
Copyright © 2000-2008 tocotoco, S.Graphics all rights reserved.
# by sgraphics | 2008-04-24 09:52 | キューバの歩き方/2006

April, 11. 2008 vol.164

April, 11. 2008  vol.164_f0055491_5454831.jpg

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vol.164/表紙「NEW YORK COMIC CON」
2008年4月11日号(vol.164)掲載
*表紙記事の内容は こちらでご覧になれます*
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# by sgraphics | 2008-04-10 05:02 | バックナンバー

クバナの歩き方(35)

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 旧市街から新市街へとタクシーで戻る。最後の夜となるホテル「Melia Cohiba」の部屋は確かにゴージャスで、女性用のヴィデの便器も別にあるしバスローブなどのリネン類はもちろん、アメニティグッズも豊富で至れり尽くせりである。連れは相変わらずアメリカのケーブル局にチャンネルを合わせてESPNを観ている。
 その間に、今日こそはゆっくりお湯(バスタブ)にでも浸かろう!と、バスルームに入ってお湯の蛇口をひねるのだが、何だか生温い水しか出てこず、ダダダッと、水の勢いはあるものの到底溜めて浸かれる温度ではなかった。結局、またシャワーだけでサササッと済ませて「もおぅ寒いなあ〜、ちょっと風邪ひいたかな」程度の不快感である。バスルームから出ると、いきなり連れからの苦情である。それは直接私に対してではナイものの、明らかに同ホテルを選んで予約した私に対しての嫌みがたっぷり含まれている。
「あのさぁ〜、どこかの部屋で工事しているらしくて、先からすっごくウルサイんですけど……」。私は水シャワーで冷たくなったカラダを何とか暖めたくて素早くベッドの中に潜り「私、今ちょっと寒くて風邪ひいたみたいだから……後で電話してみる」と応え、いつものような何でも即聞き入れるアテンダントに徹しないでいると、また小言が返ってくる。「ほら、またガンガンやってる……ねえ聞こえるでしょ?」と、全く意に反さず、直ぐにでもフロントに電話しろという口調である。しかしながら、水シャワーしか出ず本当に今寒くて、とても電話でコンプレインできる状態でないことを告げると、徐に受話器を取り上げ、舌打ちとともに自らフロントに電話を架けだした。クバナの歩き方(35)_f0077769_42193.jpg「○○号室だけど、シャワーは水しか出ないし、こんな時間にガンガン工事の音がして全く迷惑だ。ここ5つ星のホテルじゃないの?こんなことでいいのかなあ。ったく、これじゃ眠れない!早く違う部屋に変えてくれ」といった内容だった。どうやらフロントの対応は、空き状況を調べて違う部屋を用意するとの返答だったらしくて、連れは広げっぱなしになっている自分のトランクを黙って片付け始めた。その後ろ姿を見て「どうやら部屋を移るらしい」ことを知り、ようやく暖まってきたベッドから出て着替え直し、私もトランクを片付けることになる。
 待てど暮らせど一向にフロントからの電話連絡がない。あ〜、また奴がキレてしまう…と思ったその時、部屋のチャイムが鳴り、連れが出て行くとポーターらしきボーイがドアの外から「お部屋のご用意が出来ました。お荷物をお運びします」とか言っている。間髪入れず連れが「それ何階?その部屋、どんなタイプ?」と聞いているのが聴こえる。ボーイは「もっと上階の特別スウィートルームでございます。ベッドもキングサイズのダブルベッドをご用意致しました」。連れはただ一言。「ダメ!そんな部屋。兎に角ツインベッドで上階の違う部屋にしてくれ!」と言い放ち、バタンという強くドアを閉める音で、どうやら一回戦は終わった感じだ。
 ともかく早くぐっすり眠られる温かいベッドに在りつきたいと念じながら、また暫し、フロントからの連絡を待つことになった。(次号に続く

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メモ:今回までの合計金額=$1673.89
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CUBA AIR =$322.00/カンクン〜ハバナ(往復)
US AIRWAYS =$354.89/ラガーディア〜カンクン(往復)
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Telegrafo =$172.00(1人分/3泊/旧ハバナ宿泊)
Melia Varadero=$230.00(1人分/2泊/バラデロビーチ宿泊)
Melia Cohiba =$95.00 (1人分/1泊/新ハバナ宿泊)
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キューバでの遊興資金=$500.00(445ペソ)
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2008年4月11日号(vol.164)掲載
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# by SGraphics | 2008-04-10 04:03 | キューバの歩き方/2006

March, 28. 2008 vol.163

March, 28. 2008  vol.163_f0055491_15235812.jpg

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vol.163/表紙「ND/NF」
2008年3月28日号(vol.163)掲載
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# by sgraphics | 2008-03-27 16:06 | バックナンバー

クバナの歩き方(34)

クバナの歩き方(34)_f0077769_1233222.jpg

 旧市街は相変わらず賑わっていてアチコチのお店から楽しい音楽も聞こえてくる。踊り出すほどの雰囲気ではないもののキューバンミュージックはなかなか心地いい。何かを買う予定も欲求もないのだが、今夜でこの国ともお別れかと思うと、何だか切なく、何かしら買っておこうとする観光客根性が騒ぐ。しかし、それっぽい土産屋も既に閉まっていて、諦め心地で夕闇をそぞろ歩く。連れも同じ気持ちなのか、突然、1件の店の前で立ち止まり躊躇している。そんな連れの肩を押すようにして入ったのは、ちょっとイカした「葉巻ショップ」だ。
 もう店じまいしたい感じの店主は、愛想も「いらっしゃいませ」の言葉すらなく、冷やかしだと思ったのか無視を決め込んでいる。連れは余程、葉巻ブランド「COHIBA/コイバ」のパルタガス葉巻工場での失態(私が無理矢理、買いに走らされ、間違っているからと言って私が高い葉巻を買い取らされた件)が気になるのか、真剣にハマキを直視し、店員に一言「コレとコレと、コレ!」と素早く注文。クバナの歩き方(34)_f0077769_6392311.jpg
 商品を見せてくれ!でも、説明してくれ!でもなく、いきなり「全部でいくら?キャッシュで払うから」と太っ腹な日本人を演じている(本当は超ケチ臭いヤツですから、私に対してだけかも知れませんが)。店員が値段を告げると、ヤツはおもむろにキャッシュの束(輪ゴムで巻いて持ち歩いている)から札を出して「釣りはいらねーよ、取っておきなっ」とか何とか……。オイオイお前はドラッグディーラーかっ!こんな所で格好つけても仕方ねーだろっ!これじゃまるで農協のオッサンじゃねえかっ!これだから田舎者って(神奈川県大和市出身らしい)嫌なんだよなっ!と、横で恥ずかしい思いをしながらも、ふと店主の顔を覗いたら、なんと愛想ブリブリ、ニッコリして「ありがとうございます。お客様に粗品ですがコレを差し上げます、どうぞ!」と言って、ちょっとシャレた使い捨てライター(写真左)を1個貰ったりしていた。はあ〜、オヤジはオヤジ同士、国籍を超えて気が合うんだよな。
 しかし、連れは一体、どんだけ焦って買い物したいんだろう?女の私よりはるかに物欲が旺盛でミーハーで、あさはかな野郎であることを再認識した。連れは葉巻で満足したのか、結構機嫌がいい。この調子で何とか最後の夕食にありつこうと考えを巡らすのだが、連れの腹具合も好みも読めず、また嫌な顔をされるのを覚悟して「あのさ〜、また、あのお店、あのイタリアンでもいいかなあ?」。考えるのも面倒だし、連れがマッシュルームのイラストを提示してご希望の品をゲットした店でもあることだし、案外美味しいと気に入っていたのを思い出して恐る恐る訊いたのだが……、意に反して「うん、いいよ」と即答を得られた。案ずるより産むが易しである。
 ほっと肩をなで下ろしてメインストリート、オビスポ通り(Calle Obispo)の角に位置するイタリアンレストラン「Gentiluomo」に再び足を運んだ。程よい疲れと眠気が襲ってくる中、イタリアンはキツイが、まあ、パスタ程度ならと、私は定番のトマトソースを選び、連れはウエートレスに「この前来た時、マッシュルームのイラストを示して注文したんだけど、う〜ん、君じゃなかったかな?キミ、ボクのこと覚えてる?今日も同じピッツア食べたいんだけど、マッシュルームの載っているヤツ作ってね」と、たかだか2回目なのに既に常連さま気分だ。厨房で訊いて来たらしく、ウエートレスが急いで戻ってきて連れに「オーダー承りました」と一言。連れは、またここでも「ほらね!」と王様気分だ。
 ま、そんなに気分が良いならグチをこぼされることなく最後の晩餐も穏やかに過ごせるだろう、とヘンに期待をしたのも束の間。テーブルに注文の品が並んで食べ出して2分経つや否や、いきなり「もう、ったく…、あの〜、スパゲティ、音を立てないで食べてくれませんか、蕎麦じゃあるまいし…ったく恥ずかしい」との苦情だ。
 右手にフォークを持ち、左手に持ったスプーンの腹でクルクルとパスタを丸めて、静かに口の中に放り込め、ということらしい。実際、パスタをそんな風にして食べるアメリカンやイタリアンはいない、と言っても過言ではない。蕎麦のように音を立ててズルズルという食べ方をする方が、スープ(汁)がない分、反って難しい。しかも、音を立てずにスプーンで丸めて食べるほど、大げさなディッシュでもない。通常パスタは、まずフォークに引っかかった分量だけ一気にスルッと口の中に放り込み、ソースとパスタの絶妙なコンビネーションを、舌でじっくり味わってから喉元を通り過ぎ胃に送り込むというのが主流である、ハズ。しかし相手は田舎者の頭の固い日本人野郎。私が黙って従うほか道はない。
 スプーンの腹でクルクルまとめて1口づつ静かに運んで、最悪な感じで何を食べているのかの感覚も味も分からないまま、情けないやら哀しいやら、嫌な感じで兎に角早く時が過ぎるのを待つ。本来なら映画のワンシーンのように「ほんとアンタって、サイテー、サイアク!」と言い捨て、ヤツの顔にコップの水をかけてテーブルをひっくり返し、出て行きたい気分だ。
 ようやく食事が済み、お勘定の段になって連れから「コーヒーいる?」と訊かれ、即座に「要らない」と応えると、連れは自分の分だけのエスプレッソを1つ、ウエートレスに悠々とオーダー。ヤツはどこまで人の気持ちを読まず逆撫ですれば気が済むんだろう。ワザと?なのかなあ〜、と思いながらも、ヤツが飲み終わるまで、じっと我慢の時が静かに流れる。(次号に続く

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メモ:今回までの合計金額=$1673.89
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CUBA AIR =$322.00/カンクン〜ハバナ(往復)
US AIRWAYS =$354.89/ラガーディア〜カンクン(往復)
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Telegrafo =$172.00(1人分/3泊/旧ハバナ宿泊)
Melia Varadero=$230.00(1人分/2泊/バラデロビーチ宿泊)
Melia Cohiba =$95.00 (1人分/1泊/新ハバナ宿泊)
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キューバでの遊興資金=$500.00(445ペソ)
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2008年3月28日号(vol.163)掲載
Copyright © 2000-2008 tocotoco, S.Graphics all rights reserved.
# by sgraphics | 2008-03-27 12:33 | キューバの歩き方/2006