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カラダはカタル

 もう15年くらい前の夏の話。当時付き合っていた彼と、何か些細なことで口論となり、私が踵を返した、その時、いきなり後ろから「ちょっと待って!」と左肩をギュッとつかまれて……。

 何も昔の色恋沙汰を告白するつもりは毛頭ない。時は夏で、私も若さ故、肩出しのトップを着ていた。ギュッと私の肩をつかんだ彼の左手の指先が、思いのほか力が入っていて、彼の人さし指の爪が、直接、私の地肌にめり込んだ。その時の口論の行く末がどうなったかは思い出せないが、後々残る傷跡を見て、毎年夏になると彼が「○○○さん、ケロイド体質やねんな」と言ったことを覚えている。
 人を傷つけておいて何という言い草?と思わなくはないが、笑えるので許していた。今でも帰国した際、彼に会うと「ケロイド発言」でゲラゲラ笑えている。
 ケロイド体質なるものがあるとも知らなかったが、ある程度以上の深さの傷ができると、コラーゲンが対応して大量に生産され傷を埋めるが、この大量生産が行き過ぎると必要以上のコラーゲンが作られ、元の傷の範囲を超えてコラーゲンの塊を作ってしまい、この塊になった状態のものをケロイドと呼ぶらしい。
 どうやら一旦ケロイド状になった傷は一生消えず、よって私のカラダは、歴史年表のようにアチコチに色々想い出がある。

 すべてが思い出せるというワケではないが、例えば左足の膝裏外側に約20cmくらいの1本のライン傷がある。これは小学4年生の頃、生地屋さんで反物を巻く木枠を階段変わりにして遊んでいたら、中の芯棒が折れて、出ているクギが足に食い込んでガアーッとできた傷。
 両膝のお皿部分のケロイドは通称「ぐるぐる回り」(児童公園などにある固定遊具の一つで、バトミントンのハネを巨大にしたような型)に引き摺られてできたモノ。
 おでこの赤い痣は、この世に生まれ乍らにして持って出て来たモノ。助産婦さんが「こんな小さい痣なら大人になるまでに消えますよ」と両親を慰めたらしいが、どっこい、成長すると共に痣も同比率でしっかり成長。生まれて産湯に浸かっている当時の写真で見る痣の大きさと、現在、おでこに占める痣の大きさは等しい。
 そして、お腹のペケポン(×)マークは、幼稚園児の頃に虫垂炎を患ってできた手術の跡。しかし私としては、この跡にはちょっと異義申し立てがあって、父親の知り合いの外科医が「ま、大きくなってからではコトが面倒だから、今切っとこか」てな具合で、大した盲腸でもナイのに、何年か後には注射で散らすなどという方法も開発されたのに、ましてやカエルじゃあるまいし、ペケポンマークを幼い女の子のカラダに刻むとは……。医者はこの幼い娘の将来を、その時考えたろうか。一体、どういった了見なのであろうか。季節は冬の夕方、コタツに入ってミカンを食べていたら、急にお腹が痛くなったので寝かされている私を、帰宅した父が即、開業医である友人の病院に連れて行き「切っとこか」になったのである。それ以来、私はミカンを口にしていない。しかし「カエルの解剖授業」じゃあるまいし、この手術室に父親もドクター姿となって一緒に入っていたことも今更乍ら驚く。娘のカラダにメスが入るのを見届けたかったのだろうか、それとも「お父さんがいるから大丈夫だよ」というメッセージだったのだろうか。今となっては、万一、私が遭難したりテロの被害を受けて行方不明者となり死んだ場合、遺族が遺体を確認する際には役立つだろう。
 と色々カラダに傷はあるが、要するに心の中にできた傷は、人によっても異なるが、一生残る、ってものでもない。しかしカラダに出来た傷跡は、当時の痛みこそ忘れてはいるが、消そうにも消えない。大小の差こそあれ、深く想い出となって刻まれていく。

 目に見えて、カラダに残るものは傷だけではない。ということが、この歳になってやっと分かった。
 母親や年上の人などから散々言われてきたことだが、若い時分は聞く耳を持っていなかった。そう、それは「シミ」だ。
 とにかく「年柄年中、真っ黒だった」と言っても過言ではないくらい、いつも陽に灼けていた。今のようにSP指数の高い日焼け止めもなかったが、元来、面倒臭がり屋なため、それらのローション&クリーム類も付けず平気でガンガンに焼いていた。で、50手前になって気付くと、手や胸、肩に、見た感じ「発疹のようなシミ」が無数にできている。それも人に言われて気付くから、ちょっとしたショックである。
 今夏も、すでに女性2人から「どうしたの、虫に刺された?湿疹?」と半袖の下から覗いている腕を見て言われた。ショックとはいえ、年中ロングTシャツで通して隠す程、私は特に気にもしていないし「さらにガンガンに灼くと、どうなるんだろう」などと企んでもいる。しかし「若い頃は美白なんて流行っていなかったしなあ」と嘆いてみても後悔先に立たず。今更どうしたものかと悩んでみても、既に遅かりしだ。
 しかし、この日焼けによるシミにも、先のケロイド体質のように、人によって差があるのだろうか?シミが出来易い肌質とか色素があまり沈着しない人とか……。そういや、私は人より灼け易いことは確かだ。人によっては赤くなって、すぐ褪める、という人もいるが、私は赤くもならずイキナリ黒くなるタイプで、一旦焼けると真冬でも黒いまま残っていた。そんなことをも考えると、私は「ケロイド体質でシミ肌質」ってことなのだろうか——。何だかちょっと、ソンしたような気分だ。
# by SGraphics | 2006-08-09 12:21 | エッセイ

vol.01/BONAIRE - the Netherlands Antilles

vol.01/BONAIRE - the Netherlands Antilles_f0077769_12202040.jpg ベネズエラの北に位置するボネールは、通称「オランダ領ABC諸島」と呼ばれるうちの1つで、Aはアルーバ、Bはボネール、Cはキュラソーの頭文字をとって、そう呼んでいる。ボネールは誰もがイメージするカリブの「ヤシのキがそよぐ常夏の島」という感じはなく「サボテンが密集する砂漠の島」。日用品からサカナ以外の食材のすべて、といっても過言ではないほど、輸入品に頼っている何もない島だ。しかし、この島の人々の底抜けな陽気さと懐の深さが、そのままのカタチで残されている——。
 時間はアメリカの東部夏時間と同じで、通貨はオランダ領アンティル諸島ギルダー(US$1=1.77NAf)。レストランなど、一般的にどこでもUSドルは通用するが、おつりはギルダーで返される。年間平均気温は27度で、平均水温は29度とダイバーたちのメッカにもなっている。島をグルリと一周するのにも1日あれば十分で、車はアメリカの運転免許証があれば借りられ、ドライブも可能だ。言語はパピアメント語とオランダ語だが、英語、スペイン語なども通じる。パピアメント語の由来については諸説があり、ひとつはスペイン語と原住民の言葉の混合という説、もう一つは17世紀、オランダ領となった時にアフリカの様々な部族から連れて来られた奴隷とヨーロッパ人のコミュニケーションの手段として共通言語を作ったという説。現在も島民はパピアメント語を日常で使っているので耳にすることも多い。(次号に続く
# by SGraphics | 2006-08-09 12:20 | ガイドブックにない島

July, 28. 2006 vol.127

July, 28. 2006 vol.127_f0055491_1349452.jpg

特集「T.I.」
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2006年7月28日号(vol.127)掲載
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# by SGraphics | 2006-07-28 08:50 | バックナンバー

ウオノメ—タカノメ

■2か月ぐらい前から、ちょっと気になっていたことがあった。それは右手人指し指、第一関節上のやや外側にできている直径2mm程度の「魚の目」である。全く忘れている日もあるが「やっぱ歳の所為かなあ。角質が老化してできるんだろうか」と気になる日もある。しかし、ここでヘンなことが起こった。
「ちょっと、コレみて。コレ邪魔なんだよなあ。どうすれば治るかな?」と右手人指し指、第一関節上の内側中央部分にできている直径2mm程度の「魚の目」を突然見せられた。位置は私のモノより5mm程内側だが、見かけ、症状、位置などほぼ同一のモノだ。聞いてみると、彼も2か月くらい前から気になっていたようだ。私としては、何ゆえに同じか所の同じ出来物に同時期2人揃ってこっそり悩んでいたのかが不思議で「何か変な食べ物、一緒に食べたかなあ」などと何の根拠もない原因を突き止めたり考えたりもした。そして、この偶然を苦笑しつつも「アンタも歳やねん」と応えて「ほら、みてココ。私も同じトコにできてるねん」と見せた。が、彼は特に、この偶然に驚いた様子もなく「ふ〜ん」と言ったまま黙って自分の指を見つめている。私にすれば「ま、そんなもんか…」と彼の反応に少々拍子抜けしたことを除けば、別に何の問題もなかった。
 しかしその後「コレって、ハンディなんだよな」と続いた。ハンディ?何が?と訊く前に「ほら、女の人とセックスする時にさ、人指し指にコレって…、色々触ったりするワケじゃない、男ってさあ…、だから相手にも気遣うし…」ときた。彼はこの手の話「下ネタ」を得意としているキャラではないことは分かっている。一応私の前では。しかし、だからと言って、何と応えればいいのか迷った。まさか下ネタを振られるとは……。
 世の中には男女に限らず「下ネタ」好きな人がいる。別に澄ましているワケでも、気取っているワケでも、カマトトぶっているワケでもないが、私は苦手で、その手合いの話しに加わる気はしない。また相手も読み取っているのか、その手の話しを振ってこられることも少ない。しかし、普段、面白みにも欠け、あまり目立たない感じの人が下ネタになると、イキナリ雄弁になり、ギラギラに輝いてノリノリで相手に話しを合わせて盛り上げているのを何度か見たことがある。その人は女性だった。最初は何かの勘違いかな?と思ったが、彼女は下戸だし、酔っているワケもなく、何度目かに「ああ、彼女は下ネタが好きなんだ」とようやく悟ったことがある。
 別に悪いことではない。男性からすれば「話の分かるヤツ」ってことで喜ばれ、モテる要素と生りうるかも知れない。私は「女性のクセに下品だ」と眉をひそめているワケでもない。が、ただ同性から受ける下ネタは異性のそれより印象は良くない。というか、異性のそれより遥かにナマっぽい。どう反応すればいいのか、どうキリ返せば彼女が納得するのか判断の付き様もない。相手が異性の場合は「来るゾ、来るゾ」と気配を感じて先回りし、話の流れをサラリと変えることくらいできるが、同性の場合、こっちも構えていないし、すっかり気を抜いてるので、突然の振られようにドギマギし、無防備で完敗となる。
 この場合、クセが悪いのは「やだあ〜、○○って、以外と恥ずかしがり屋さんなんだあ」とか「えっ、知らないの〜、ウッソー?ホントにぃ?」「きゃ、赤くなってるぅ」と笑ってからかわれることだ。しかも大抵は年下の女性だ。恥ずかしがり屋さん、と「さん」付けな部分が既に寒い。この手に関する防御策は案外ないのかも知れない。
 同性異性で感じることが他にもある。私はゲイチャンネルの人気コメディ番組「ノアズ・アーク」を面白可笑しく観ることができるのだが、どうやらストレートの男性は嫌悪感を持つらしい。3分と画面を凝視できないでいる。男性同士のキスの場面などが出てくると「あ〜〜、気持ちわりぃー」とくる。私もこれが女性同士の場面だと1分も観ていられない。「超、キモイ」となる。いくらキレイなギャル同士であっても見るに耐えない。逆に男性はレズビアンものも平気、どころか、好きこのんで「いいじゃん、いいじゃん」と観て楽しめるらしい。う〜ん、これって相手がストレートか否か確かめるテスト教材に生り得るかもしれない。
「魚の目」事件に戻るが、彼は麻雀を打つの牌が原因だと推測。私はコンピュータのマウスが原因だと決めつけている。早速、ネットで調べてみると、まず我々が勝手に「魚の目」と呼んでいるのは間違いで、ウオノ「目」は、サカナではなくトリだった。鶏眼と書いて「ウオノメ」らしい。まあ、それはともかく、手にできる「ウオノメ」は足などにできるものとは異なり、どうやら症状からして「タコ」のようだ。ペンダコの類い。そういや余談だか、コンピュータに向かう以前は中指にずっとペンダコが出来ていた時代が私にはあった。懐かしいが、全くペンを持たなくなったな、と少々反省もしている。さて我々2人が手にした「タコ(胼胝=べんち)」は、外因による手の皮膚の「角化病態」、反復性の機械刺激が原因の「限局性の角質増殖」で発生するということだが、今もって意味がよく分からない。要するにウオノメ・タコのできる原因は体の防御反応で、体の特定部分に継続して圧力や衝撃などの刺激を加えると、体はその刺激から体を守ろうとして皮膚を厚くするらしい。よって、切ったり削ったりすれば、さらに皮膚は硬くなろうと反逆してしまうらしく益々厄介だ。いづれにしても外科的切除が望ましく、21世紀の皮膚外科治療機器と呼ばれる「サージトロン」というラジオ波メスで、バターが溶けるようにウオノメやタコも取れてしまうらしい。
 さて、○○くん、どうする? もし、キミがトヨタの社長クラスだったなら、セクハラ訴訟でも起こして、私1人だけ「サージトロン」でも何でも受けて切除してみるところなんだけど……。ま、病院嫌いの我々としては、コツコツ根気強く「イボコロリ」などで柔らかくして取るしか、道はないみたいです。どうかどうか、辛いハンディ、いつまでも大切に背負って、唯一、キミのお得意芸「女の子とのお楽しみ」のひとときを、台なしにして、この猛暑と一緒に思い存分イライラしてくださいませ。暑中お見舞い申し上げます!
2006年7月28日号(vol.127)掲載
# by SGraphics | 2006-07-26 13:06 | エッセイ

July, 28. 2006 vol.127

July, 28. 2006  vol.127_f0077769_1331019.jpg

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特集「T.I.」
July, 28. 2006 vol.127
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# by SGraphics | 2006-07-26 13:03 | 特集見開きページ