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クバナの歩き方(29)

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 今夜のディナー予約をしたレストラン「Fuerteventura」までには随分時間があったので、私は1人、ホテルを抜け出して、すぐ近くにあるというショッピングプラザ「ラス・アメリカス」まで歩いて出かけた。期待はしていなかったが、閑散としていて客も疎ら。店の人たちにも商売っ気がなく、どの店にもTシャツやタオルなど、在り来たりな土産物が軒先にブラ〜ンとかかっているだけだった。値段を交渉するため、店の扉を開ける気すらしない大きなショッピングモールだったが、モールの通路に品々を広げて商売している屋台には手作りのブレスレットやネックレスなどが並べられてあって、ここが一番、買い物客で賑わっていた。他にも、重厚な扉で威圧している「高級葉巻き店」には相変わらず客が入っていて、皆、宝石のように、ガラスのケースに祀られた「コヒバ」を眺めている。ハバナ旧市街にあるコヒバ工場の直営ショップで買うよりも、この店の方が一段と高級感が増している。じっくり見回っても小1時間も持たないショッピングモール。さして用事も見つからないのでそそくさとホテルに戻った。
「どうだった?何かあった?」と連れが訊く。どうやら、モールに関心があるようだ。結局の所、モールはすべて高いし、敢えて欲しいとも思わなかったので私は手ぶらで戻り、ホテル1階で出品している土産物屋でチェ・ゲバラの黒のTシャツ(写真)を自分用に1枚買って、渋々部屋に戻っていた。「あのさー、ほら、皆が水着の上から腰に巻いている布って…。う〜ん、分かるかなあ? あ〜ゆ〜感じのヌノって、モールにあったあ?」。連れは、どうやらパレオのことを言っているようだ。もちろん、どの店にもパレオなどなかった…と、私は思う。各店内に入って探していないから、有ったかどうか自信はないが、万一有ったとしても、どうしようもナイ、使えない柄で、しかも高額という最悪な土産物になっただろう。しかし、何故アンタがパレオ? 全くイメージがつかない。何を思ってパレオ? と一瞬、己の耳を疑ったが、呼吸を整えて一応、オウム返しに訊いた。「布? ひょっとしてパレオのこと? う〜ん、なかったと思うけど…。で、一体有ったとして、どうすんの?パレオ?」。このギモン、不味かったかも知れない。連れは少し間を置いて「えっ? あぁ…。自分で使う…」と、1オクターブ高い声で言った。えっそっ、そんなバカな…? とは思ったが、ま、彼女か誰かへのお土産だろうことは私だって察しが付く。しかし、男の人って、ホント何にも知らないんだなあと、今さらながら思った。
 奴はイーストビレッジに住んでいて、セントマークスを肩で風切ってギャルズと闊歩することが自慢だったりする40過ぎの気恥ずかしいオヤジである(端から見て)。多分オヤジは、連れ歩いている若いギャルズ以外、何も見ていないんだろうな、と思った。イーストビレッジに限らず、NYの至るところで「パレオ」はよく目にする。しかも安価で、柄や色もめちゃくちゃ選べるほど、半端じゃなくホント豊富だ。こんなクバナの片田舎のモールで、高くて大柄で品の悪いパレオを(もし有ったとして)ゲットして、ホイホイ鼻の下延ばしてギャルズにプレゼントしたとして、一体、誰が喜ぶだろう。そんな既得な女性は、彼の周りには…というか、NYにいない。例えクバナ土産として貰っても、セントマークスで買って貰った方が余程イイ品物が手に入るから、素直に喜べない、演技なしでは「ありがとう」が言えない困ったギフトである。私は一言「パレオならセントマークスで買った方がいいよ」と告げて、そそくさとバスルームに籠った。クバナの歩き方(29)_f0077769_5522812.jpg
 晩餐のため一応、袖があるマシな服装で階下のレストランに向かった。場違いも甚だしい。キャンドルライトにピアノとバイオリンの生演奏。何組もの男女のカップルが正装でテーブルに着いている。何だか笑える。ワインを勧められるが2人ともノーだ。同店は、すべて3コースメニューになっているものの、多分、ブッフェのメインダイナーと同じキッチンで調理されたモノが、ここでは1皿ごと工夫して盛り付けられ、大袈裟に運ばれて来るだけのことで、味は変わらない。バイオリン奏者が各テーブルを回って「何かリクエストしてください」と告げる。どのテーブルにも花とワイン、そして見つめ合って食べているカップルたち。もお〜〜ったく。何とか早く、この場所から消え失せたい我々は、食後のコーヒーすら頼まず、3コースメニューをわずか30分以内で全て平らげ、周りの客はもちろん、ウエイターやウエイトレスをもアッと驚かせて引き上げた。キャンドルライトに照らされてムーディーなナイトを余儀なくされた我々は「黙って早く食べて、デザートはブッフェに行こう」「うん。分かった」。たった、この二言だけである。(次号に続く

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*料金表示はすべて1人あたりの金額です。
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メモ:今回までの合計金額=$1673.89
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CUBA AIR =$322.00/カンクン〜ハバナ(往復)
US AIRWAYS =$354.89/ラガーディア〜カンクン(往復)
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Telegrafo =$172.00(1人分/3泊/旧ハバナ宿泊)
Melia Varadero=$230.00(1人分/2泊/バラデロビーチ宿泊)
Melia Cohiba =$95.00 (1人分/1泊/新ハバナ宿泊)
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キューバでの遊興資金=$500.00(445ペソ)
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2007年12月14日号(vol.158)掲載
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by sgraphics | 2007-12-15 05:53 | キューバの歩き方/2006
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