September, 26. 2008 vol.175

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vol.175/表紙「Everybody Hates Chris」
2008年9月26日号(vol.175)掲載
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# by sgraphics | 2008-09-26 06:53 | バックナンバー

September, 12. 2008 vol.174

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vol.174/表紙「自己愛性人格障害」
2008年9月12日号(vol.174)掲載
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# by sgraphics | 2008-09-09 10:44 | バックナンバー

「当然、私が正しい!」恐るべし思い込み

「ニシコリ、ニシコリー!」。
 今年のUSオープン(テニス)の大会6日目、3回戦で、全く予想外だった錦織圭(日本=写真)が第4シードのダビド・フェレール(スペイン)を倒して4回戦に進んだ。これは、オープン化以降日本史上初の4回戦進出となるらしく、日本のスポーツニュースなどのサイトでも騒がれていた。が、読んでみると、結構ウソの報道も多い。
 日本でどう伝えられているのか分からないが、この試合も、全くテレビ画面には登場しなかった。プライムタイムに差し掛かる時間帯であったため、女子シングルスの試合が流されていて錦織の試合は途中経過を伝えるアナウンサーの声のみの放送であった。しかし、放送中の女子の試合で選手がケガによる手当を受けている間だけ、画面が違う試合へと映り変わる。相手がフェレールなので、ひょっとして……と、期待に胸を膨らませたが、映された画面は、他の男子シングルスの試合であった。
f0077769_1051123.jpg 結局、テレビを横目にラップトップのコンピューターを手もとに置いて、USオープンのオフィシャルサイトで「ライブ・スコア表」で、数字が次々入れ替わるのを見守っていただけである。それでも、北京五輪の時より遥かに愛国心が湧いたことに変わりはない。15、30、40と、コンピューター画面に映し出される単なる数字に一喜一憂して「YES!」「がんばれ!ニシキオリ!」と声を出しガッツポーズを取りながら声援した。
 テレビ画面から聴こえてくるアナウンサーが時々伝える、錦織の途中経過の声のみの放送……。「ニシコリ、ニシコリって、ったく!ニシキオリだろうーがっ」。そういやオフィシャルサイトの表示もニシコリ(NISHIKORI)となっている。「ったく!」と憤慨した。
「アメリカ人は本当にバカ。何でちゃんと調べないんだろう。奴らには、ホント愛がないんだよなあー」。そう、愛がナイ=「i」がないのである。
 NISHIKORIではなくNISHIK「i」ORI。奴らバカだから、絶対、間違っている。そう信じて疑わなかった。
 最後の5セット目、トータルで約10分くらいだろうか、やっと錦織の試合がテレビ画面に映し出された。苦戦しているものの、何だか視ていて負ける気がしない。相変わらずアナウンサーや解説者の「ニシコリ」連発にうんざりしながら、イチイチ「じゃねえーよ、ニシキオリだっつーの!バ〜カ」と突っ込みを入れ、試合が終わった。ニシコリが、あのフェレールを下して4回戦進出の切符を手に入れた。
「スゴイぞ!ニシキオリ。やったー!」と声に出して喜んだ。
 若干18歳のスゴイ日本人選手が現れた。今後、私の中のテニス熱は益々過熱するだろう。勝利者インタビューで錦織が放った最後の言葉「I DON'T KNOW」に会場はドッと湧いたが、まあ、彼は今マイアミで暮らしているということだし、英語でのインタビューはこれからもっともっと上手く受け応えできるだろう。テニス選手は例外なしに、どこの国の選手でも、ちゃんと英語で受け答えができるよう指導されている。日本人メジャーリーガーも通訳に任せず、いい加減見習うべきだとつくづく思う。それにしてもだ。この「ニシコリ」が正解だったなんて……。夢にも思わなかった。
 愛が無い(iがない)と思って疑わなかった。アメリカ人はバカだと中傷した。日本人の私の読み方に決して間違いは無い。そう信じて、断固、知ったかぶりを圧し通して声援していた。「私が当然正しい」。思い込み、概念とは何と恐ろしいモノだろう。「ニシコリ……」。思いもよらなかった。
 大会7日目の4回戦、ニシコリは19歳のフアン・マルティン・デル=ポトロ(アルゼンチン=ATPランキング17位)に、あっさり3対0で負け、大会から姿を消した。もちろん試合は1分足りともテレビで放送されなかった。こんなもんだ。世界の壁は厚い。
 今大会で感じたのは若い選手たちの猛烈な勢力だ。最強ナダル(スペイン=同1位)もまだ22歳だし、昨年、話題をさらったジョコビッチ(セルビア=同3位)も21歳である。しかしお馴染みではない面々が次々と現れ、しかも大抵はティーンエイジャーだ。彼らはアメリカンナイズされているのか、今どきのガイズなら、どこの国も同じなのかは分からないが、1球ごとのガッツポーズが、やけにリアルで好感が持てる。ゴルフしかり。もう過去の「紳士淑女のスポーツ」とは、かけ離れた力づくの試合展開がコートで炸裂する。大袈裟ながら清々しい——稀にみるエンターテイン・スポーツである。
2008年9月12日号(vol.174)掲載
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# by sgraphics | 2008-09-09 10:05 | エッセイ

August, 29. 2008 vol.173

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vol.173/表紙「Beauty and the Best——Ana Ivanovic」
2008年8月29日号(vol.173)掲載
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# by sgraphics | 2008-08-28 07:18 | バックナンバー

「らしい」を突き進むオリジナリティー

 最新の映像技術が駆使され、壮大なスケールで行われた開会式で幕が開いた「北京五輪」も、色んな問題を残したまま、やっと終わった。ここニューヨークで、祖国ニッポンを応援したのは何度目だろうか——。放映権を持つNBC局で連日流されるのは、もちろんアメリカ人選手がメインである。滅多とニッポン人選手の活躍にはお目にかかれないが、最早、日本人代表選手よりも、常にTVなどで目にしているアメリカ人代表選手の方が馴染みがあり、より身近な人となっている。
「毒入りギョウザ事件!再過熱」。
 会期中、日本のネットワークニュースで、嫌気がさすほど中国の不祥事を日々知らされることにも慣らされた。さりとて、ニューヨークに暮らしていると然程、過敏にもならず、相変わらずチャイナタウンに出向いては色んな食材を買い漁っている。ご当地チャイナタウンも五輪に何ら左右されることなく、いつも通りで、街は常にコピー商品で溢れかえっている。
 彼らは、そういう人種なのだ。
「北京五輪開会式で、中国の56の民族代表と紹介された子どものほとんどが漢民族と判明」というニュースが、五輪が始まって1週間目には報道されていた。どうやら開会式で配布された資料に「中国の56民族からの56人」と明記されていたが、実際は、大多数を占める「漢民族」だったということである。これについての北京五輪組織委員会の説明が面白くて、正直笑えた。当局はあっさり事実と認め、悪ぶれる様子もなく「イベントなどでは、よくあること」と説明。
 う〜ん。実に「らしい」。
 さらに次々暴かれたニュースの中での「らしい」を紹介すると、手始めは「口パク事件」である。f0077769_548339.jpg
 あの壮大な開会式で、少女(林妙可ちゃん=9歳=写真左)が歌った「革命歌曲」が、実は、中国共産党政治局の指示による口パクと判明した。世界中に流れたあの歌声は、別の少女(楊沛宜ちゃん=7歳)の声の吹き替えだったらしい。で、当局の説明が、これまた「らしい」のである。
 当局が堂々と発表したコメントは「7歳の少女は容姿がいまひとつで、9歳の少女の方は歌がいまひとつであるため替えた」である。えっ?そんなバカな……と思うのは人種、文化、教育の違いである。
「中国最悪!国は子どもを利用してもいいのかっ!幼い少女たちの心を傷つけることは二の次、三の次かっ」。そう考えるのが最も一般的だろう。しかし「人民」は違うのだから、こっちの一般的な考えを押し付けて、人民にコメントや釈明を求めても無意味である。
 期待する回答を求める方がヘン(傲慢)なのだ。
 中国系のネットニュースでみると、7歳の楊沛宜ちゃんは「姿が出なくて、残念ではありませんでしたか?」とのインタビューに「全然。オリンピックでは、幕後英雄(縁の下の力持ち)がいっぱいいるし、私の歌声を使ってもらえて大満足です」と元気よく応えて(応えさせられて?)いる。ま、当然の答えだ。また北京市民は「一番きれいな娘を中国人の代表にしただけ。どこが悪いの」「アニメのアフレコみたいなもの」と、実に「らしい」大陸的なコメントだ。
 調べてみると、どうやら9歳の林妙可ちゃんは国民的美少女アイドルで、TVや映画にも数々出演し、最新の映画出演料は3分間で60万元(約900万円)らしい。また現地法人「トヨタ自動車」「松下電器」などの日系企業を含む約40社の企業広告でもお馴染みの顔という。
 現在、中国の大手ポータルサイト「新浪網」では、この話題の2少女の人気投票「林妙可VS楊沛宜」が展開されており、途中経過の発表では、歌声代表の楊沛宜ちゃんがダントツ1位で70%を超えている。
 続いて暴かれたのは「五輪の歩み」をイメージして天安門から会場に向かって打ち上げられた花火である。生中継で世界中に流された「花火」の画像は、すべてCGの合成映像で、音楽は事前に録音したモノが流されていたということだ。「やっぱりなっ!」。何事に於いても、結果良ければすべて良し!何が起こっても不思議がらない、騒ぎ立てない、追求しない……。
 実に「らしい」のである。
 8日の開会式当日、TV中継の画面を観て「ほおぅ、中国も、なかなかやるなあ〜」と、21世紀の中国に期待しつつ、そんな彼らに脅威すら感じていたが、瞬く間に「無理ムリ!いやいやアカンでやっぱり…」と、中国当局レベルの実態や人民たちの感情を知って苦笑(安堵?)した。
 4000年、5000年とも伝えられている彼らの永い歴史。彼らは「らしい」を払拭するまで、あと何十年、いや何百年かは必要とされるかも知れない。
「チベット問題」「ウイグル自治区カシュガル襲撃事件」と山積している独立問題。胡錦濤国家主席が語った「五輪の決定的要素は団結、友好、平和」とはほど遠く、民族問題が先鋭化している実情を、さらに世界に露呈してしまった北京五輪——。何ら解決の道が見出されないまま、彼らはドンドン突き進んでゆく。
 実に「らしい」、見事である。
2008年8月29日号(vol.173)掲載
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# by sgraphics | 2008-08-28 05:49 | エッセイ

August, 15. 2008 vol.172

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vol.172/表紙「POLAROIDS:MAPPLETHORPE」
2008年8月15日号(vol.172)掲載
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# by sgraphics | 2008-08-12 02:42 | バックナンバー

名声を取るか住み心地を取るか……それが問題だ。

 前回の「嗚呼!デザイナーズマンション」に続く、日本での物件探しの続編である。
 つい2週間前「えっ、来月帰国しなければっ!」と、引っ越し業者選びにまでコトが及び、資金面調達に頭のイタイ思いまでした物件に、遂ぞ、出会ってしまった。
 今年はどうやら新築物件ラッシュらしく、賃貸物件もめじろ押し状態である。
 上を見ればキリがナイことを知りつつも、ついつい月額家賃の上限を上げて探してしまう。日本の友人の話だと、大抵、独り暮らしを始めるOLが借りる月額レンジは10万円以下のワンルーム(1R、1K)で、最多は平均月7、8万円といった相場らしい。
 なるほど、日々仕事に疲れて「帰って寝るだけ」に等しい我が家に、さほど贅沢する必要もないだろう。やがて結婚(同棲)するまでの仮住まいである。よって10万円以下の物件数はめちゃめちゃ多く、そのバリエーションたるや、アメリカのエージェントは爪の垢でも煎じて飲むべきである。
 狭い空間を、如何に上手く工夫して設計するかに於いて、日本のアーキテクチャーの右に出る人種はいないだろう。
 その最たる人、そう、安藤忠雄。この人である。f0077769_1501378.jpg
 大阪市港区出身の彼の作品の数々は、文化教育施設や博物館、美術館、またはギャラリーや商業施設などで、世界的にみても「一般住宅」を手掛けた数は、たかが知れている。
 個人的な繋がりから、彼が受注した住宅(住吉の長屋)、または彼が建て直しを所望した住居(六甲の集合住宅)以外、ほとんど見られない。ましてや公共プロジェクトの一貫でもない「単なる賃貸物件」などは皆無である。
 しかし、その1つが、今年2月、大阪キタにある安藤忠雄建築研究所のすぐ傍に建てられ「入居者募集中」という。
 世界の安藤が設計したマンションに入居できる——「これは、ひょっとしてアリかも知れない」。正直焦った。
 現在残っている空室は2戸(Aタイプの1R=42.97㎡)。家賃+共益費込みで月々12、13万円程度。壁はコンクリート打ちっぱなしで床はフローリング。立地も梅田ロフト近くで都会のド真ん中、住居兼事務所(SOHO=スモール・オフィス・ホーム・オフィス)としての使用も可能で条件は決して悪くない。
 帰国して、知り合いに伝える際の「付加価値」としては最高のインフォメーションにも成り得ると、スケベ心もちょいと顔を出す。
 兎に角、物件の詳細が知りたくて、このビルを取り扱っているエージェント数社に早速、問い合わせのeメールを出してみた。
 流石だ。思った以上に日本の不動産会社の対応は早い。
 即、各社から快い返信が届いて、添付されて来た「間取り」(右上)や画像(左下)を食い入るように見て、敷金や礼金(約60万円)などを弾き出して算段、思案する日々が始まった。
 寝ても覚めてもこの間取りとの戦いである。ただ1つ悩んでいることは「めっちゃ狭い」ことだ。14.7帖のたった1つの空間に「住まいと作業場」を両立させ、どれだけ我慢できるかにかかっている。
 阪急梅田駅から徒歩6分、RC構造7階建て。総戸数は18件、1階に店舗が1件と専用駐車場2件分、これが同ビルの全てだ。f0077769_1505893.jpg
 しかし、梅田から徒歩6分はデタラメである。通称「新御堂」の高架を越えてまだ東へかなり入る。
 毎日放送本社ビルや梅田ロフトからも5分はかかると予測できる。もしかすると地下鉄御堂筋線の中津駅の方が全然近いかも知れない。私の足では、どちらの最寄り駅へも10〜15分は有にかかるだろう。まあ、若者たちがたむろする今どきの商業店舗が密集する街並みをテクテク歩く訳だから、そんなに遠くは感じないだろうとは思う。
 同ビルの外観やエントランス、各戸の玄関廻り(デカくて重厚なドア)は、部屋の内装&設計に比べてかなりイイ感じに仕上がっている。しかし、ハッキリ言って、ココで暮らすのは快適ではない。どころか、この家賃で他を探すと、デザイナーズマンションが建ち並ぶ人気のミナミの堀江辺りでさえも、もっと快適で広いイイ新築デザイナーズ物件が続々見つかる。
 見た目、名声を取るべきか、住み心地を取るべきか……、それが問題である。
2008年8月15日号(vol.172)掲載
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# by SGraphics | 2008-08-12 01:51 | エッセイ

July, 25. 2008 vol.171

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vol.171/表紙「食い合わせ=合食禁」
2008年7月25日号(vol.171)掲載
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# by sgraphics | 2008-07-25 04:18 | バックナンバー

嗚呼!デザイナーズマンション

 躍起になること無しに、何とな〜くだが、日本での賃貸物件を探している。
 生まれてこの方、都会のコンクリートの中でしか生きて来ていないし、親類縁者すら誰一人、地方に暮らす知人を持たないため、漠然と自然に囲まれた田舎での緩やかな生活に憧れを抱いている。f0055491_3301273.jpg
 ニューヨークでは北海道から沖縄まで、結構、地方出身者と出会ったが、その人を頼りに、周辺の物件を探すほど仲が良いワケではない。
 しかしまあ、近い老後、ひとり一人を訪ねて、日本国中、津々浦々行脚できるのもまた、長年この地に暮らしたからこその「ご褒美」かも知れない。
 それにしても「一度、田舎で暮らしてみたい」という気は薄れない。歳の所為だろうか——。もう現役でバリバリ働くことも、多分ナイであろうと見込んだからか——。
 ここ数年ブームの「沖縄移住組」にノルのも、気乗りせず、かと言って縁もゆかりもない地方都市に独り移り住んで、自然と暮らす「奇をてらったアーティスト」では毛頭ない。特に、田舎に籠って何かを創る作家風でもナイし、町おこしのお手伝いをする善良な市民になるには、相当遠い感じだ。
 何より、根っから都会育ちの弱点は、蝶やトンボにも慣れておらず、わずか3mmのテントウ虫にさえビビらされる極度の「虫嫌い」にある。
 数年前、ロス辺りにでも住み着いて「トピアリー」(樹枝を動物・星・円錐などの形態に刈り込む人)の修行でも積んでみようかと、不埒な考えがよぎったこともあったが、如何せん「虫が怖くて仕事になるかいな!」と友人から指摘され、即、断念した苦笑いの経験もある。
 余談ではあるが、生まれて初めてこの目でホタルが飛んでいるのを見たのは、アッパーウエストサイド87丁目に住んでいた友人の古ぼけたアパートのベランダからである。
 ただ漠然と憧れているだけで、何の目的や目標も持たない輩には、田舎に移り住む権利すら与えられていなさそうな空気である。
 徒歩1、2分で主要地下鉄の駅に辿り着き、傘入らず。駅前には年中無休で24時間営業のコンビニがあり、ちょっと足を延ばせば児童公園くらいはある。週末、ちょいと車で飛び出せば、狭い日本、都心から小1時間も走ると、当然海か山にぶつかる。街は旨いモンで溢れかえり、通勤ラッシュや携帯生活にこそ慣れていないものの、ごった返した都会が、老いつつあるカラダに最も適した適所になっているのだろう。
 やっぱり都会しかないか——。f0055491_331885.jpg
「個性ある住空間をご提供いたします!」
 日本を出た15年前には多分なかったハズである。サイト上で、デザイナーズマンションという「ハコ」にイチイチ目が停まる。なるほど、壁はコンクリート打ちっぱなしで床はフローリング仕上げ。ロフトと謳った中2階の低い空間へは、数段の梯子が備え付けられてある。
 何かのドラマで見たような、都会での1人暮らしの王道をゆく洒落た空間は、きっと若い人たちにウケがいいのだろう。狭い空間をいかに広くみせ、合理的かつクールに使うか……。アーキテクチャーの腕の見せ所である。しかし、得てして格好ばかりに気を取られ、快適にはほど遠い設計になっているモノも多々ある。
 その1つがバスルームである。
 時代は変わった——。
 お風呂場と呼ばれていた従来の浴室が、何故か全面ガラス張りになっていて、トイレの便器、洗面所、浴槽が1つに集められ、リビングから丸見え状態の物件が台頭している(写真参照)。
 その浴槽も「足付きのバスタブ」がデ〜ンと置かれてあって、洗い場は無く、バスタブの中でシャワーする洋式タイプだ。よってシャワーカーテンの導入である。
 日本式の、ちょいと跨いで深く浸かる「埋め込みタイプ」の浴槽と洗い場がついた浴室は、施工も大変だろうし工費もかかるだろう。コストも抑えられ、尚且つカッコイイという観点から「丸見え」でもヨシとされるバスルームに物言いを付けたい。
 その昔、タイル張りの浴室掃除(カビ取り)の苦労から解放されると主婦が泣いて喜んだ「一体ユニット型」バスルーム。経済成長とともに団地からマンションへと時代は変わり、蛇口を捻ればお湯が出て、更に追い炊き機能も付いた淡いカラーのユニットバスに、誰もが格好イイと感じたのは25〜30年前である。
 それが…、である。
 壁やドアはガラス張りで、床もコンクリートあるいはタイル張り、そこにむき出しのパイプ類にシャワーカーテンという「掃除泣かせの浴室」に逆戻りしている。
 結局、ガラス張りのドアには目隠しのパテーションなるものを取り付けるだろうし、陶器にはヒビ割れが生じるかも知れない。パイプ類もサビるだろうし、ゲストが来る度、浴室掃除にホトホト神経を使うことになるだろう。何が哀しくて、またシャワーカーテン……。
 ダサイと言われてもいい。帰国したらやっぱり「日本のお風呂」に浸かりたい——。
2008年7月25日号(vol.171)掲載
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# by sgraphics | 2008-07-25 04:16 | エッセイ

July, 11. 2008 vol.170

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vol.170/表紙「HANABI」
2008年7月11日号(vol.170)掲載
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# by sgraphics | 2008-07-11 13:16 | バックナンバー