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2010年/年賀状

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# by sgraphics | 2010-01-17 10:26 | 年賀状シリーズ

アメリカンズ・ウエー

 アメリカから完全撤退し、一時帰国を除いて15年ぶりに日本に着地して約2週間が経った。日本のテレビ映像から毎日流し出される深刻化した「失業問題のニュース」を耳にするたび「一寸先は闇」を思い知らさる辛い日々を送っている。それでも街に溢れる若者は皆、最新式ケータイやipodなどを手に、今年の流行らしき高価なダウンジャケットを身に纏って好き勝手に生きている(……ように、私には見える)。
 日本の住民票を一旦放棄してアメリカの日本総領事館に在留届けを提出している身としては、帰国後、部屋を借りるにしても、取りあえずのバイト先を探すにしても、ことごとく却下される難儀な問題に直面する。疎外感とでも言おうか、日本国籍を持っていても何の意味もない。お役所的なことには全て住民票や印鑑証明書、はたまた源泉徴収票などは必須である。それも15年間、日本に税金を支払っていなかったツケだと思うしかないが、今まで道を外すこともなく生真面目にガムシャラに生きて来て、気がつけば50歳になっていただけのことなのだが(私にすれば)、本国に帰ると、ちょっとしたことにも、私には全く社会的信用が無く、何でもカンでも、たった1人の兄貴に保証人を頼むしか、この日本で生きる(生かされる)道は無くなっていた。「あ〜、兄弟がいて良かったぁ」と、本当に思い知らされる。
 そこに加えて、最悪な円高ドル安である。日本のクレジットカードも15年前に失効していて現金(円)もあまり持っていないため、ちょっとした生活用品購入の支払いも、取りあえずはアメリカ発行のクレジットカードに頼らざるを得ない生活だ。何かを買う度にアメリカの銀行口座からドンドンお金が引き落とされるのだが、アメリカの銀行は規定貯蓄残高に満たなくなった場合は毎月手数料もしっかり取られるシステムだから2度イタイ思いをする。
 こんな辛い事情から、いつまで経ってもアメリカの口座すら閉じられない状況が続いている。そこへ、追い打ちをかけるノーティスなしのアメリカでの定期的な仕事の打ち切りだ。不況に嘆く在米日本人の状況も、手にとるように分かるため、グッと堪えて二つ返事で条件を飲むしかない。
 ほんの僅かな収入であったにせよ、アメリカの口座をキープする微かな望みであった仕事が、突然消えた。職業柄、私はインターネット環境さえ整っていれば、どこの国であろうが一切違わず仕事の受注は可能である。「帰国または移動する」ことに何の障害も生じない特異な有り難い職業でもある。しかし世の中とは、何か相手にエクスキューズを求める。本来、何の原因にもならないことだが「○○さんが帰国するから」というフレーズが、どうやら公然と打ち切りの理由になってしまっているようだ。これがアメリカンズ・ウエーなのかも知れない。
 イラクから完全撤退しないブッシュ大統領に対して14日、靴投げ騒動が起こった。米軍がイラクに駐留する根拠となる米軍地位協定に、イラクのヌーリ・マリキ首相とブッシュ大統領が署名する際の共同会見上で、エジプト・カイロ放送局のイラク人記者が「別れのキスを受け取れ、この野郎!」と罵声を浴びせながら、自分が履いていた左右の靴を投げつけた。
 この記者はただちにボディガードらに取り押さえられ、会見場から引きずり出されたが、ここ2、3日のニュースを見ると、この記者を英雄視する報道がアチコチで目立っている。根強く残るアメリカに対しての敵意は、決して拭い去ることは出来ないだろうが、この騒動の結末を見て知って「YES! THIS IS AMERICA!」「めっちゃええやん。これこそアメリカ人やん!」と、つい口に出して苦笑してしまった。こんな緊迫した状況下で、咄嗟に「今の靴のサイズは10だったよ」と一笑して、会見を丸く治めて続行したブッシュを、私は手放しで受け入れる。さらに「アンタは吉本新喜劇かっ」と突っ込みたくもなる。どこの国の大統領(要人)であれ、こんなクールな対応は出来なかったと、私は思う。騒動後の未だ反省の色が見えないコメントについては「やれやれ」とは思うが、ここらもまた、アメリカンズ・ウエーなんだよなぁ、と既にアメリカを懐かしんでいる自分がいる。
 これから私は、まだまだ靴を投げつけられる思いに遭遇するやも知れない。しかし、どんな状況にあっても、吉本のノリで、何事にも上手くジョークで交わすことのできる大らかさと余裕を持って過ごしたいと心底願っている。どんな相手であれ、こちらが大人でクールな態度でさえ接していれば悔しくとも、お互い傷付くことは少なくて済む。
 読売アメリカ社がアメリカから撤退し失業後、約5年間に亘って幣紙に携わり、我が子のように可愛がり育てて来たtocotocoが、今号を持って休刊(廃刊)することとなった。幣紙は私にとって色んな意味で「ニューヨークでの足跡」となる。カタチあるものはいずれ忽然と消える。創刊しては廃刊する。日本でもアメリカでも何度も味わった。それでも、懲りずにまた立ち上げる。それがマイ・ウエーになることを祈りつつ……。
2008年12月26日号(vol.180)掲載
# by sgraphics | 2008-12-26 22:13 | エッセイ

November, 28. 2008 vol.179

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vol.179/表紙「全国駅弁日和」
2008年11月28日号(vol.179)掲載
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# by sgraphics | 2008-11-25 01:00 | バックナンバー

誤読

「不況、不況」と景気の悪い文字が踊る今、日本企業の中で唯一、バブリーだとされて来たメディア業界(テレビ各局)も例外ではないらしい。経費削減で社内のコピー用紙の節約などは決まりきったことだが、番組の基本となる「台本」も部数を削減し、タレントが使う楽屋からはティッシュペーパーの箱が無くなり、トイレの水の出方を抑えて節水し、社屋中の天井の照明(電球、蛍光灯など)も、テレコテレコに消されて1個飛ばしの状態で点けられているという。
 これらは某局だけ、というワケではなく、全ての局がそうであるらしい。「明らかに時代は変わった」と、売れっ子お笑い芸人たちが口々にグチをこぼす。しかし、そのお笑い芸人たちが今、各局でひっぱりダコ状態にある。
 番組制作。それ自体の経費が大幅に削減されているとあって、どこの局も「安価でもソコソコの視聴率が取れる」クイズ番組に頼らざるを得ないという。毎年、年末から年始にかけ「開局○周年記念特別番組、総制作費○○億」との触れ込みで放送される豪華キャストが揃う「ドラマ」の類いも、もう御法度のようだ。少し話が逸れたが、世は正に「クイズ番組黄金時代」となっている。
 主役となるのは、まだギャラの安い若手お笑い芸人たちやグラビアアイドルたちで、その学力を競う……というより、その低学力(バカさ加減)を競って、お茶の間に笑いを誘う仕掛けである。
 可愛いオンナの子たちの「あり得ない、考えられない回答ぶり」で視聴率は上がり、そのバカさを売りに「シャレです、シャレ!」と、今、波に乗れる時にできるだけ乗ってドンドン稼げとばかりに、次々とユニットを組み、ヒット曲を出して何万枚、何千万枚もの売り上げを記録する。「バカがウリ」の時代である。「バカ度」はマイナスイメージにはならず、好感度アップが狙える「おいしいツール」になったのである。
 確かに、自分よりバカを見て憤慨する人もいない。考えられないオバカな回答ぶりを見て聞いて、思わず吹き出してしまうことはあっても、気分を害してしまう人はいないだろう。私はこれらのバカっぷりを「ヤラセ」とは思わず見ていたのだが、中には「これはちょっと上手く出来過ぎている、ヤラセだろう」との見解を持つ人もいる。そう言われれば、やっぱりそうかなあ〜、と思えるくらいの低能ぶりで、そうなってくると、結局は、台本を書く放送作家たちの頭のキレ如何に関わってくる、ということになる。
 政治家たちの演説にも、それぞれキチンとした台本があり、原稿を作成してくれる頼もしい秘書官などがいる。
 その影武者(秘書官)に、放送作家ほどのキレの良さは求められてはいないが、自分が仕えている「武将」そのものの能力、知力のリサーチ不足が、最近目立っている。
 秘書官にすれば「そこまで、ウチの武将はバカじゃないだろう」「これ以上、噛み砕いた原稿(読み仮名をふるなど)にすると、反って失礼だし、バカにしてるのかっ!と一喝されはしないか……」などという遠慮(配慮)があってのことだった、とは思う。しかし実際は、大喝されても「バカを対象とした」原稿を作成したの方が良かったのである。これらは全てリサーチ不足の、秘書官に責任がある、と私は思う。
 自分の武将のバカっぷりを世間に堂々と打ちまけてどうする。ひょっとすると、失脚させたいがためのワナなのか?とさえ思えるフシすらある。
 原稿たるや、読む対象を入念に考えて、完璧に仕上げてこそプロである。裏の裏の、その裏をも見通す力量が書き手に試される——そこにこそ、本来、物書きの醍醐味があるはず、である。
「詳細」「 頻繁」「未曾有」「踏襲」。我が国ニッポンの麻生総理は、これらの漢字の読みが出来ない。
「詳細=しょうさい」を「ようさい」、「頻繁=ひんぱん」を「はんざつ」、「未曾有=みぞう」を「みぞゆう」、「踏襲=とうしゅう」を「ふしゅう」と読み上げ、記者団から指摘されても「そうですか。単なる読み間違い」と一蹴した。
 読みができないということは、書く事も当然、できないのだろう。ましてや、ことの意味については、皆目分かっていないのだろうとの察しもついてしまう。文章の前後から察して、あり得ないだろう「誤読」を平然とやってのける。しかも、国会答弁や行事の挨拶上でだ。
「出たよぉ〜ゆとり教育!」と、半ばシャレ的に使われる「ゆとり教育の歪み」を、自分のバカなる要因には持ち出せない「超ボンボン育ちの老獪」である。
 発足して2か月、余りにも暴言、失言の類いが多過ぎやしまいか——。カップ麺の市場価格を1個400円程度と予想する首相が「(医師に対して)社会的常識の欠落」を語って、またもや発言をアタフタと撤回する昨今。ごく普通の日本語でさえ正しく読むことができない68歳の首相を、私は笑えない。
2008年11月28日号(vol.179)掲載
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# by sgraphics | 2008-11-25 01:00 | エッセイ

November, 14. 2008 vol.178

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vol.178/表紙「OBAMA de GIFT 2008」
2008年11月14日号(vol.178)掲載
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# by sgraphics | 2008-11-13 07:16 | バックナンバー