誤読

「不況、不況」と景気の悪い文字が踊る今、日本企業の中で唯一、バブリーだとされて来たメディア業界(テレビ各局)も例外ではないらしい。経費削減で社内のコピー用紙の節約などは決まりきったことだが、番組の基本となる「台本」も部数を削減し、タレントが使う楽屋からはティッシュペーパーの箱が無くなり、トイレの水の出方を抑えて節水し、社屋中の天井の照明(電球、蛍光灯など)も、テレコテレコに消されて1個飛ばしの状態で点けられているという。
 これらは某局だけ、というワケではなく、全ての局がそうであるらしい。「明らかに時代は変わった」と、売れっ子お笑い芸人たちが口々にグチをこぼす。しかし、そのお笑い芸人たちが今、各局でひっぱりダコ状態にある。
 番組制作。それ自体の経費が大幅に削減されているとあって、どこの局も「安価でもソコソコの視聴率が取れる」クイズ番組に頼らざるを得ないという。毎年、年末から年始にかけ「開局○周年記念特別番組、総制作費○○億」との触れ込みで放送される豪華キャストが揃う「ドラマ」の類いも、もう御法度のようだ。少し話が逸れたが、世は正に「クイズ番組黄金時代」となっている。
 主役となるのは、まだギャラの安い若手お笑い芸人たちやグラビアアイドルたちで、その学力を競う……というより、その低学力(バカさ加減)を競って、お茶の間に笑いを誘う仕掛けである。
 可愛いオンナの子たちの「あり得ない、考えられない回答ぶり」で視聴率は上がり、そのバカさを売りに「シャレです、シャレ!」と、今、波に乗れる時にできるだけ乗ってドンドン稼げとばかりに、次々とユニットを組み、ヒット曲を出して何万枚、何千万枚もの売り上げを記録する。「バカがウリ」の時代である。「バカ度」はマイナスイメージにはならず、好感度アップが狙える「おいしいツール」になったのである。
 確かに、自分よりバカを見て憤慨する人もいない。考えられないオバカな回答ぶりを見て聞いて、思わず吹き出してしまうことはあっても、気分を害してしまう人はいないだろう。私はこれらのバカっぷりを「ヤラセ」とは思わず見ていたのだが、中には「これはちょっと上手く出来過ぎている、ヤラセだろう」との見解を持つ人もいる。そう言われれば、やっぱりそうかなあ〜、と思えるくらいの低能ぶりで、そうなってくると、結局は、台本を書く放送作家たちの頭のキレ如何に関わってくる、ということになる。
 政治家たちの演説にも、それぞれキチンとした台本があり、原稿を作成してくれる頼もしい秘書官などがいる。
 その影武者(秘書官)に、放送作家ほどのキレの良さは求められてはいないが、自分が仕えている「武将」そのものの能力、知力のリサーチ不足が、最近目立っている。
 秘書官にすれば「そこまで、ウチの武将はバカじゃないだろう」「これ以上、噛み砕いた原稿(読み仮名をふるなど)にすると、反って失礼だし、バカにしてるのかっ!と一喝されはしないか……」などという遠慮(配慮)があってのことだった、とは思う。しかし実際は、大喝されても「バカを対象とした」原稿を作成したの方が良かったのである。これらは全てリサーチ不足の、秘書官に責任がある、と私は思う。
 自分の武将のバカっぷりを世間に堂々と打ちまけてどうする。ひょっとすると、失脚させたいがためのワナなのか?とさえ思えるフシすらある。
 原稿たるや、読む対象を入念に考えて、完璧に仕上げてこそプロである。裏の裏の、その裏をも見通す力量が書き手に試される——そこにこそ、本来、物書きの醍醐味があるはず、である。
「詳細」「 頻繁」「未曾有」「踏襲」。我が国ニッポンの麻生総理は、これらの漢字の読みが出来ない。
「詳細=しょうさい」を「ようさい」、「頻繁=ひんぱん」を「はんざつ」、「未曾有=みぞう」を「みぞゆう」、「踏襲=とうしゅう」を「ふしゅう」と読み上げ、記者団から指摘されても「そうですか。単なる読み間違い」と一蹴した。
 読みができないということは、書く事も当然、できないのだろう。ましてや、ことの意味については、皆目分かっていないのだろうとの察しもついてしまう。文章の前後から察して、あり得ないだろう「誤読」を平然とやってのける。しかも、国会答弁や行事の挨拶上でだ。
「出たよぉ〜ゆとり教育!」と、半ばシャレ的に使われる「ゆとり教育の歪み」を、自分のバカなる要因には持ち出せない「超ボンボン育ちの老獪」である。
 発足して2か月、余りにも暴言、失言の類いが多過ぎやしまいか——。カップ麺の市場価格を1個400円程度と予想する首相が「(医師に対して)社会的常識の欠落」を語って、またもや発言をアタフタと撤回する昨今。ごく普通の日本語でさえ正しく読むことができない68歳の首相を、私は笑えない。
2008年11月28日号(vol.179)掲載
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by sgraphics | 2008-11-25 01:00 | エッセイ
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