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クバナの歩き方(24)

 約10分ほど走って市街に出ると、すぐ高速道路(フリーウエー)に入った。ちゃんと道路も鋪装され、中央分離帯がある立派な道路だ。信号もなくドンドン加速する。辺りの景色があっという間に田園風景にとって変わる。牛やら馬などが放牧されている広大な大地は、真っ青な空の下、目にも鮮やかな緑が生い茂っており、この国の資源の豊かさを目の当たりにする。肥えた土地には農作物がグングン育ち、周りがすべて海に囲まれているクバナは、他のカリブ海に浮かぶ近隣諸島にありがちな、枯れた土地に苦しむ島民の貧しさなどは微塵も感じられない。コンビナートと思しきエリアも通り過ぎ、暫くすると、標高何千m級の高い山々がそびえる。資料によると、島の25%は山岳地帯となっているという。しかも、その山麓からは銅や鉄といった鉱物資源も産出されるらしい。たかだかハバナから2、3時間の近郊のリゾートに行くまでで、既にこれである。このカリブ海最大の島(全長1250km/最大幅191km)には、一体、どれだけの資源が眠っているのだろうか。
 目的地のハバデロに着くまでに1度、トイレ休憩のために立ち寄る「峠の茶屋」風ドライブインがある。トイレを使う女性には、見張り番のおばさんからトイレットペーパーを約10cmほど千切って手渡される。ここでは、ありがちな土産物などは一切置いてもいない。10〜15分ほどの休憩で、ノドを潤したい人は何か飲めばいいし、用を足したければサッサと済ませばいいという感じだ。タバコを1本燻らして、さて出発。また同じような風景の中をバスはどんどん進んで行く。のどかな風景にも飽きた頃、バスが減速し出して、路肩にユルユルと止まった。
「何だろう?パンクしたワケでもないのに」と、ふと窓の外を見ると、道端に農作物を並べている親子がニコニコしている。日本でもちょっとした田舎の街道沿いでよく見受けられる光景だ。この時季、日本なら「松茸ありマス!」といった看板がやたらと目に付く感じだろうか。エンジンをかけたままドライバーが外に出て、2、3言葉をかわしながら、笑顔で農作物を受け取っている。なるほど、彼(運転手)は必ず自分のシフト時には、ここに立ち寄り、食材を調達して帰るのがお決まりのコースなのだ。彼の家族は、それら新鮮な野菜や果物をいつも心待ちにしているのだろう。金銭の受け渡しまでは分からなかったが(見えなかった)、多分、商談は成り立っているのだろう。何事もなかった顔でドライバーはまた黙々と走り出した。クバナの歩き方(24)_f0077769_2265097.jpg
 かれこれ2時間以上は走っただろうか。バスは一般道路へと出た。人口50万人という町、マタンサス「Matanzas」を通過する。その町並みはひっそりしていて、かろうじて人が2、3人歩いているのが数えられる程度だ。真夏の暑い盛りにブラブラと歩いている方が狂っているのかも知れない。方やバスの中は快適でエアコンもガンガンに効いている。街道沿いは多分、車の行き来があるためか、土埃などで建物の壁という壁は灰色に染まっている。当たり前だが、何だか味気なくひっそりしていると感じるのは、どの町にも看板(広告)が全くないためである。どの壁を見ても、どの屋根の上を見ても、シール1枚ビラ1枚ない。土煙に覆い尽くされ、灰色のファンデーションで化粧された小さな町。車窓から見るこれらの町から、人々の豊かな暮らしぶりは想像できないが、決して貧しくはない気がした。外観や生活レベルではないのだ。なぜか、そう思った。
 いくつもの町を通り過ぎると、ちょっとした都会になり、減速。どうやら地元の空港「Aeropuerto de Varadero」だ。クバナの空路は国内路線が結構設けられていて、このハバデロへもハバナから1時間弱の飛行で到着できる。客待ちをしているのか、この空港で暫く留まっていたが誰1人乗り込んで来ずにバスは出発した。クバナの歩き方(24)_f0077769_2284382.jpg
 バスの最終目的地、クバナ随一の高級ビーチリゾート、ハバデロがあるヒカコス半島(Peninsula de Hicacos)は、ちょうどNYのロングアイランドのような細長い半島で、遠浅で白砂の海岸は長さ28kmにも及ぶ。かつてはデュポン(Du Pont)など、1930年代にアメリカの富豪家たちの別荘地として栄えたハバデロも、革命(1959年)と同時に、それら豪邸は空き家となり、国の財産へと変わったという。さらに近年、この地にヨーロッパ資本がどんどん入り込み、ハバデロにある施設や豪邸、ホテルなどは、すべて高級かつ大型リゾートへと変貌した。3時間のバスの旅がそろそろ終わる頃、気付いたことがある。通常、この手のバスなら、各ホテルへシャトルバスとなって乗客を降ろしてくれるのだろうと高を括っていた。しかし現実は、終点のバスターミナルと思しき小さな小屋に無事到着。どこだか全く分からないまま降ろされてしまった。はて、困った。万一、宿泊するホテルが歩いて行けるほどの距離だとしても、この暑さとこの荷物……。ノーアイデアなので、来るか来ないか分からないタクシーを待つしか手はない。同じようにポカンとしたまま、ただただ頼みのタクシーを待つ人々もいて自然に列ができた。何台か見送った後、ようやく順番が回って乗り込んだ。メーターも付いていて車種も以外と新しい車だ。ホテル名を告げると直ちにドライバーは快走した。(次号に続く

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*料金表示はすべて1人あたりの金額です。
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メモ:今回までの合計金額=$1673.89
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CUBA AIR =$322.00/カンクン〜ハバナ(往復)
US AIRWAYS =$354.89/ラガーディア〜カンクン(往復)
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Telegrafo =$172.00(1人分/3泊/旧ハバナ宿泊)
Melia Varadero=$230.00(1人分/2泊/バラデロビーチ宿泊)
Melia Cohiba =$95.00 (1人分/1泊/新ハバナ宿泊)
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キューバでの遊興資金=$500.00(445ペソ)
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2007年9月28日号(vol.153)掲載
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by sgraphics | 2007-09-26 02:29 | キューバの歩き方/2006
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